イケウチな人たち。

by IKEUCHI ORGANIC

好きな人たちと考える、これからの豊かさ

イケウチな人たち。について

心が跳ねる瞬間を日常に。『宇宙兄弟』編集者の語れるものづくりへの想い

- 「コルク」仲山優姫×小室元気 -

何度も何度も読んでいるのに、毎回心が揺さぶられる漫画って、ありませんか?

この記事を書いている僕にとって、そんな漫画のひとつが『宇宙兄弟』です。

宇宙飛行士になり月に行く夢を「どうせ自分なんて無理に決まっている」と諦め、挑戦さえしなかった主人公のムッタ。そんな彼が心ある人たちに背中を押されながら、夢に向かい再出発していきます。

僕が特に好きなシーンのひとつが、ムッタのことを幼い頃から見ているシャロンが、自分の気持ちに素直に向き合う大切さを伝える場面です。

今のあなたにとって…、一番金ピカなことは何?

毎回、このシーンを読むとハッ…とさせられます。まるで僕に対して発せられている言葉のように感じます。自分の気持ちに正直になれているのかと。自分が一番ワクワクするものから目を背けていないかと。

ムッタがシャロンの言葉を聞いて、宇宙飛行士に挑戦する決心を固めたように、このシーンを読む度に、僕も自分の信じる道を歩もうという気持ちを強くさせられます。

株式会社コルクで宇宙兄弟の編集者を務める仲山 優姫さんは、『いい漫画』について、こう話してくれました。

いい漫画とは、自分の心の中に、その作品のシーンやキャラクターを置いて生活ができるかだと思うんです

仲山さん自身も悩む時には、自分の好きな漫画のキャラクターを相談相手に、「きっと、あのキャラクターであれば、こういう時はこうするはず。私もそうしてみよう」と、決断することが多いと言います。

現在、仲山さんは宇宙兄弟の編集をしながら、宇宙兄弟のグッズやイベントの企画など、様々な形で物語と読者を繋ぐ役割も担っています。

「宇宙兄弟のグッズに触れることで、漫画を読んでいる時の気持ちを思い起こすことができれば、物語が読者の日常にもっと寄り添えるはずです。そのためにも、自分が本気で良いと思えるモノをつくりたいんです

この想いに共感し、これまでIKEUCHI ORGANICでは、宇宙兄弟の世界観を詰め込んだバスタオルやタオルケットを一緒に製作してきました。

そして、上記の言葉の通り、自分が本気で納得できるグッズに仕上げるため、仲山さんは愛媛県今治市にあるIKEUCHI ORGANICの本社工場に足を運び、モノができる工程を自分の目で確かめました。

このときの様子は、宇宙兄弟 Official Webにて【宇宙兄弟×IKEUCHI ORGANIC タオルケット製作ストーリー】として全4回の連載記事で掲載されました

編集者というと、漫画や小説などの出版物を良いモノにするために作家に寄り添う印象が強いのですが、グッズ製作にまで強い情熱を燃やすというのは、あまり聞いたことがありません。

仲山さんが、“ものづくり” にここまでこだわる理由とは何なのか…?

それを聞くために、仲山さんと同じく宇宙兄弟編集チームでコラボ企画にも関わったコルクの小室 元気さんを交え、IKEUCHI ORGANICで宇宙兄弟の企画を担当した牟田口 武志と一緒に話を聞いてきました。

夢をかなえるのは、いつからだって遅くない

写真左から、コルクの小室さん、仲山さん、IKEUCHI ORGANICの牟田口

――まずはおふたりにとって、『宇宙兄弟』という作品は、どういう物語だと捉えていますか?

仲山さん自分を投影できるキャラクターにきっと出会える作品です。目の前に頑張りたいものがある人は、励まされると思います。

私の場合は、主人公のムッタと一緒に宇宙飛行士を目指す『せりか』に共感しました。せりかは「誰かのために」も大切にしているんだけど、「自分のために」のほうが強くて、周りが見えないくらいひたむきに頑張っている。そういう姿に、とても励まされます。

特に、宇宙飛行士に合格したことを告げられる『踊る宇宙飛行士』というエピソードが好きです。

『宇宙兄弟』第8巻《#69》踊る宇宙飛行士より

夢だった宇宙飛行士になれたことはもちろん嬉しいんだけど、「ここはあくまでスタートライン」と捉えていている感じとか、すごく良いなぁと思います。私も、憧れていた仕事に就くことはできたんですが、まだスタートラインに立っただけで、ここからどうするかが大切だと思っているので。

自分が悩んだり、壁にぶつかった時には、「せりかだったら、どうするんだろう?と考えることが、自分の判断軸になっています。

――小室さんは、いかがでしょうか?

小室さん:僕は、年齢を重ねていくつになっても挑戦できることを教えてくれる物語だと思っています。

小室さん:僕がコルクに入社したのは30歳を超えてから。それまでは、音楽業界で仕事をし、CDがどんどん売れなくなるのを目の当たりにしました。

「自分の大好きなエンタメコンテンツは、これからどうなっていくのだろう…?」

そう悩んでいた時に、作品の作り手とファンとの関係を新しい形に変えていくコルクの存在を知り、ここなら可能性が見いだせるかもしれないと思い入社を決めました。

ただ、全く畑の違う出版業界。「自分はやっていけるんだろうか…」と不安な気持ちが正直ありました。そんな時に、宇宙兄弟を読み返したら、すごくグサッときたんです。自分と同じように、主人公のムッタも30歳を超えてから、夢に向かって再出発している。また、50歳を超えていても、宇宙飛行士の夢に向かって挑戦し続ける人物も登場します。

年齢なんて関係ない。何歳になっても人はチャレンジしても良いんだと、すごく励まされたことを覚えています。

本音で向き合うことの大切さ

――宇宙兄弟に編集者として関わる上で、作者の小山宙哉さんと接する際に、意識していることは、どんなことなのでしょうか?

仲山さん:特にこれを強く意識しているというのはありませんが、強いて言うなら、普通に接するということですね。有名な漫画家だからといって、変な遠慮はしない。「違和感があるな」と思うことは、ちゃんと言葉にして伝える。

小山先生をすごく尊敬しているし、作品自体も大好きだからこそ、しっかりと自分の考えを伝えなきゃと思っています。

小室さん:これはすごく大事です。僕らが小山先生の担当になった段階で、すでに小山先生は宇宙兄弟の作者として有名です。でも、「大ヒット漫画の作家だから…」といって萎縮していたら、いい作品なんてつくれない。もしかすると必要最低限のコミュニケーションでもこなせてしまうのかもしれないけど、僕たちはそういったことはやりません。

仲山さん:これって、作家との仕事だけの話じゃないと思うんですよね。

IKEUCHI ORGANICさんとご一緒させていただいた時もそうで、「私たちはこういうことを、こういう考えでやりたいと思っている」というお互いの想いを共有できているから、良いモノがつくれたのではないかなと思うんです。

小室さん:やっぱりチームでやっている感覚ですね。宇宙兄弟を素晴らしい作品にするためのチーム。

仲山さん:あとは、作家は、作品を作る上でとても孤独だと思うんです。創作だけは他の誰も肩代わりをすることはできないので。だけど、必死な思いで作品をつくられているということを考えられる人でありたいと思っています。

心が跳ねる瞬間を日常に

――宇宙兄弟では、作中に登場する髪留めや人形など、様々なグッズをつくられています。こういったグッズを企画する意図は何なんでしょうか?

仲山さん:良い作品を読んでいると、“心が跳ねる瞬間”ってあるじゃないですか。「このシーンに感動した!」だったり、「あの場面を思い出すと泣ける…」みたいな。

そういった感情の起伏って、その人が大切にしている何かがくすぶられた瞬間だと思っていて、そういった感情の起伏を作品を読むこと以外で起こせるようにしたいと思っているんです。

小室さん:先ほど、仲山さんは自分の中のせりかと相談していると言っていたけど、そういう人ってなかなか稀だとは思うんですよね(笑)。でも、日常の中に宇宙兄弟の世界観が詰まっているモノがあれば、それに触れるたびに宇宙兄弟の物語を思い出して、気持ちが前向きになったりするかもしれない。そういう瞬間を増やしていきたいんです。

仲山さん:例えば、今、宇宙兄弟のカレンダーを作っているんですけど、宇宙兄弟のイラストがただ沢山載っているだけのカレンダーは作りたくないんです。

カレンダーを使ってくれる人が、あのシーンを思い出して、読んでいる時の感情を思い出して、「泣ける…」とか、「ジーンとくる…」とか、そんな気持ちを呼び起こせるカレンダーを作りたいと思っています。そういったモノが自分の生活にあると、すごく幸せだと思うんですよね。

全てがまる見え。この人たちなら信用できる

――仲山さんも、小室さんも、IKEUCHI ORGANICとのコラボレーションでは、今治の工場まで足を運んでいただきました。実際にイケウチと一緒にものづくりをしてみた感想はいかがでしょうか?

仲山さん:今でも印象に残っているのは、最初の打ち合わせで表参道のお店にうかがった時のことです。自分たちのタオルについて、すごく楽しそうに話をしている姿をみて、「自分たちがつくっているモノをとても大切にしている人たちだなぁ」と思い、宇宙兄弟チームがやろうとしていることと似ていると感じたんです。

私たちが宇宙兄弟のファンの方々にどういうモノを届けたいのかという話を、とても真剣に聞いてくれて、「この人たちとものづくりができたらきっと上手くいく」と直感的に思いました。

小室さん:そこからの対応もすごい早くて、牟田口さんや、イケウチの皆さんの熱量をすごく感じていました。特に小山さんとのミーティングに間に合うようにと、サンプル品を最優先で仕上げてもらって、今治からチャーター便で羽田空港に届け、空港から手持ちで僕たちのもとへと運んでくれたんですよ。これには本当に驚きました!

牟田口:宇宙兄弟は僕自身も大好きな作品ですし、皆さんのものづくりにかける想いを聞き、「宇宙兄弟のタオルは、イケウチで絶対にやるべきものだ」と思ったんです。代表の池内にも説明して理解してもらって、その後、現場の方がものすごいスピードでサンプルを作ってくれました。

仲山さん:ありがたいですよね。私も実際にIKEUCHI ORGANICのタオルを使わせていただいているうちに、イケウチさんのものづくりの現場を自分の目で見たいと思うようになったんです。それで今治の工場に訪問させていただいて、宇宙兄弟のタオルが出来上がる工程を見学させていただきました。

IKEUCHI ORGANIC代表の池内が、コルクのメンバーに工場を案内しました

仲山さん:そこで働いている皆さんのものづくりの姿勢が素晴らしいと感じたんですが、特にすごいと思ったのは、全てがオープンなんですよね。包み隠さず、まる見せなんですよ(笑)

小室さん:これは本当に驚きました(笑)やろうと思ってもなかなかできないと思うんです。これは、あえてオープンにしているんですか?

牟田口:その通りです。やっぱり情報を選んで公開するしないだと、そこに意図的なものが入ってしまうのではないかと考えているんです。持っている情報は全て見える状態にして、僕らをどう判断するかはお客さんたちだと思っています。

仲山さん:全ての情報をオープンにすることもそうだし、イケウチの方々は自分たちを知ってもらう努力もしていますよね。「この動画や記事に最新の自分たちの想いがまとまっているので、見て欲しい」と。

そういう姿に触れて、「本気で良いと思えるモノをファンの方々に届けることができる」という確信が深まっていきました。

感情を動かしてくれるものに感謝したい

――最後の質問です。この『イケウチな人たち。』では、「これからの豊かさ」をテーマにしています。仲山さんにとって、自分の心が満たされたと感じる瞬間はどんな時ですか?

仲山さん:まずは、自分が心の底から納得できるモノを作り出せたと思う瞬間です。グッズもそうですし、作品にしてもそうです。私自身も宇宙兄弟のファンのひとりとしてすごく期待しているので、合格ラインは高いんですよ(笑)。

これだったら、宇宙兄弟のファンの皆さんもきっと合格点を出してくれる!

そう思えるモノが作れた瞬間は、すごく心が満たされていると感じます。

――なるほど。ファンとしての自分が、編集者としての自分を褒めてあげる瞬間なわけですね。

仲山さん
:同時に、感情を揺さぶるものを届けていくためにも、「美味しい」、「感動した」、「嬉しい」といった自分自身の感情をちゃんと覚えておくようにしています

そんな気持ちを起こさせてくれる作品だったり、大切なものを、自分の暮らしに入れていくことが大切なんだと思います。

そして、私にそういった感情を沢山届けてくれるのは、やっぱり宇宙兄弟なんです。

そんな宇宙兄弟に感謝して、これからも、宇宙兄弟を多くの方に届けていきたいと思っています。

おわりに

「あの物語の、あのシーンの、あの人物の、あのセリフのおかげで、自分の人生を一歩前に踏み出すことができた。」

そんな風に、物語に背中を押してもらった経験って、多くの人があるのではないでしょうか。

物語を感じるものを日常に置くことで、心が跳ねる瞬間を増やしていく。

豊かに生きるという意味で、そんなモノとの出会いが大切になってくるのかもしれません。

僕も宇宙兄弟ファンとして、どんな物語を生活に届けてくれるのか、これからも楽しみにしてます。

株式会社コルク
執筆:井手 桂司/撮影:木村 雄司/編集:藤村 能光

WRITER

1984年、熊本生まれ、埼玉育ち。ブランドエディターという肩書きで、企業の持っている物語を多くの人の心に届けるお手伝いをさせていただいています。オーガニックそのままに個性的なIKEUCHIの人々がチャーミングで大好きです。IKEUCHI ORGNIC 公式 noteの編集も担当しています。

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