イケウチな人たち。

by IKEUCHI ORGANIC

好きな人たちと考える、これからの豊かさ

イケウチな人たち。について

自分たちが掲げた理念から、逃げない。理念を信じる

- 「FC今治」 中島啓太 -

「次世代のため、物の豊かさより心の豊かさを大切にする社会創りに貢献する」。

この理念を実現するべく、サッカーを知らない人でも、行けば笑顔になれる場をつくろうと活動しているサッカークラブがあります。

愛媛県今治市を拠点とするサッカークラブ「FC今治」です。

ありがとうサービス.夢スタジアム ©FC今治

©FC今治

《スタジアムビジョン》はここにいる全ての人が、心震える感動、心踊るワクワク感、心温まる絆を感じられるスタジアム ©FC今治

クラブを率いるのは、今なお記憶に刻まれる2010年ワールドカップ・南アフリカ大会、チームをベスト16に導いたサッカー元日本代表監督の岡田武史さん。

そして岡田さんの想いに共感し、外資系コンサルタントから転身し今治に移住した人がいます。

名は、中島啓太さん。

2012年に英国の大学を卒業後、新卒でデロイト トーマツ コンサルティング合同会社に入社。コンサルタントとして製造業および金融機関を中心とする海外市場での戦略立案、オペレーション改革等のプロジェクトを経験。

2015年からFC今治の経営基盤構築を支援したことを機に、現在はFC今治の経営企画室・室長に。四国初のJリーグ基準のサッカー専用スタジアムの建設プロジェクトマネジメントや、J1対応スタジアム構想や新規事業開発を推進しています。

FC今治とIKEUCHI ORGANICのコラボグッズ展開の仕掛人であり、私・タクロコマと同じ平成世代でもあります。

つい最近をさかのぼれば、英国の大学卒業後に外資系企業勤務。

順風満帆に見える人生。

けれど、心の奥底で静かにささやく「一回きりの人生、このままでいいのだろうか」。

それでも変わりない日々が続いていくだろうと思っていた矢先、偶然出会った岡田さんの言葉が胸に刺さり、本当は自分と関わりのある問題と向き合って生きる決意をしたそう。

中島さんはFC今治の門を叩きます。

人生には、逃げちゃいけないことがある

(以下、中島啓太)

人生には、逃げちゃいけないことがあると思うんです。リスクを取って踏み出さないといけないような。

僕らは試合の日のスタジアム全体のことを「フットボールパーク(*1)」と呼んでいます。サッカーの試合以外のいろいろなワクワクがあって、半日時間を過ごせる場、そして人と人との絆が生まれる場にしようとしているんです。

*1:フットボールパーク 2017年9月10日に行われた『ありがとうサービス.夢スタジアム』のこけら落としでは、Crystal Kayがヒット曲「恋におちたら」などを披露。ピッチイベントではラモス瑠偉氏に、上空からドローンで運ばれた試合球が届けられる企画を実施。その他、イベントエリアでは地元の飲食ブースが多数出店、子供たちが楽しめるふわふわドーム・出張児童館・ビニールプールを設置。アプリによるスタジアム限定コンテンツ・サービスも提供された

経済合理性だけで判断すれば、フットボールパークの開催はあまりよろしくないわけです。というのも、試合運営やフットボールパークを盛り上げる為の企画・運営を全て合わせると、400万円ぐらいかかるんですよ。

たぶんJリーグのチームでも1日で400万円もかけているところ、あんまりないと思うんですよね。

つまり正直に言うと、試合をやればやるほど赤字なんです。チケットやグッズの収入だけで1試合で400万円を売り上げることはほぼないので。会社は火の車です。

だけど、僕はスポーツを通じて喜怒哀楽を素直に表現できる社会づくりに貢献することが、夢スポーツ(*2)のコアだと思っているから、ここ今治でお客さんにフットボールパークを目いっぱい楽しんでもらえる素地を用意したいんです。

*2:FC今治の運営母体である株式会社今治.夢スポーツ

この活動や投資が、将来的にどういう形で実を結ぶかはわかりません。目に見えるお金となって返ってくることもあれば、目に見えない形で返ってくる可能性もあると思います。

わかんないですよ、本当に返ってくるかは。

例えば、ひょっとしたら「中島さん、いつも応援しているよ」ってみかんをくれるおばちゃんのみかんが返ってくるかもしれないです。

でも、僕らの企業理念には「心の豊かさを大切にする」を掲げているわけですから、この活動は成すべきことだと思っています。

千載一遇のチャンスだと思って、今治に来た

僕は岡田さんが掲げた理念に共感してここに来ました。理念に共感するきっかけとなったのは……まさに逃げちゃいけないことから、目を背けちゃダメだと思ったんです。

僕は1990年生まれで、生まれた瞬間から、いろんな問題が明るみに出ている世代です。

冷戦が終わりベルリンの壁は崩れ、日本のバブルははじけ消費税が増加し、小学校5年生の頃にはニューヨークの世界貿易センタービルと国防総省に飛行機が突っ込みました。

高校生になると、今度は「皆さんは大変な時代を生きています。今日、アメリカの金融街でリーマンブラザーズという会社が、破綻しました。ひょっとしたら分からないことかもしれないけれど、これから君たちは激動の時代を生きていくことになります。世界経済の根底が全て覆されました」と、担任の先生に朝礼でいきなり通告されました(笑)。

大学生になると、その頃は世界中でテロや自然災害が起こっていました。日本でも通り魔殺人とか、バンバン起こっていましたよね。衝撃的だったのは、留学先のイギリスで朝寝ている時に「啓太、早く来い!」ってルームメイトに起こされて、リビングのテレビを観に行ったら、見慣れた日本の景色が見たこともないものになっていた。

もうこれは、とんでもないことが起こっていると思った。東日本大震災が起きていたんですね。

世の中がおかしくなっているんじゃないかな? 金融危機や犯罪や自然災害に、自分自身がいつ巻き込まれてもおかしくないなっていう、漠然とした不安がありました。

でも、ふと自分の日常に目を向けると、なにか毎日の生活が侵害されているわけじゃなくて、結構平凡に生きている。そのことへの葛藤があったわけですよ。

そんな時に前職でアドバイザーの役職を担っていた岡田さんが、社内で講演をして下さったんです。

「3.11は社会のさまざまな問題を浮き彫りにして、本当に大事なものをみんなが考えた瞬間だと思う」と。

「水と石油のどっちが大事かと聞かれたら、多くの人が言葉では水と言う。じゃあ水を守る活動をしているか? 100人いたら100人がそうではなくて、何人か水の環境を守る活動をしているかもしれない。

限りある石油を大事にしているか? そうではない。多くの人がたくさんのガソリンを使って、石油ストーブを焚いている。

これらは人が生活するうえでは仕方のないことでもあるけれど、事実を見つめることから逃げちゃ、水や石油を大切にしたいと思う気持ちは存在しなかったことになる。

その心を忘れちゃいけない。人生は短くて必ず終わりがあるから、一人ひとりが本当は自分と関わりのある問題から逃げるか逃げないかで、これからの社会が変わってくる。考え方と行動で、人生が決まっていく」って話してくれたんですよね。

これだ! と膝を叩きました。なんとか人生、このまま変わりなく進んでいくよなぁと思っていた時に「逃げるなよ」と言われたと感じたんです。

その約1年後、〝次世代のため、物の豊かさより心の豊かさを大切にする社会創りに貢献する〟という理念のもと、岡田さんがFC今治を立ち上げることを聞きました。

自分の中にある葛藤から逃げちゃ、きっと僕の人生は僕の人生でなくなってしまう。千載一遇のチャンスだと思って、今治に来たんです。

理念そのものが次の世代の為にある

僕が今治に引っ越してしばらくした2017年の夏に、第2回目のバリチャレンジユニバーシティ(*3)をやったんですね。

*3:次世代の社会変革者を育成するためのインキュベーションプログラム「Bari Challenge University(バリチャレンジユニバーシティ)【スポーツのちからでどうやって活力に満ち、人が集まってくる街にするか】をテーマに約60名の参加者が2泊3日の間、フィールドワークやグループワークを行い、今治市でスポーツを通じて自分たちにどのようなことができるのかディスカッションした成果を発表するプロジェクト

その時にファシリテーターとしてIKEUCHI ORGANICの神尾武司さんが参加してくれたんですよ。

前職の頃からSDGs(持続可能な開発目標)のケーススタディでよく目にしていたので、もちろん会社名は知っていたんですが、あぁそうか、イケウチさんは今治にあるんだなと思って。

興味を持っていた会社だったので、とある休日の直前に、本当に軽い気持ちで連絡したんです。

「神尾さん、今度の週末に工場を見学させて頂くことは出来ないでしょうか?」って。

するとびっくりぐらいすぐに快諾してくださったので本社を訪ねると、神尾さんだと思っていたら代表の池内さんが出迎えてくださったんです。私みたいな、いち希望者に対して個別に工場見学をアレンジしてくれて、しかも「今日は池内が案内しますから」って仰って下さる。

まずそのことにもイケウチさんの本気度を感じたんですが、池内さんに「一体どういったビジョンを掲げていらっしゃるのでしょうか?」と尋ねたら、びっくりする答えが返ってきました。

「2073年までに赤ちゃんが食べられるタオルをつくりたい」って仰るんですよ。

「タオルを食べる……? いや、ちょっと待って!」って心の中では思ったんですけど、初めて会う方だったので遠慮して「あぁそうですかー」みたいな無難な反応をしてしまいました(笑)。

考え方はすごいシンプルなんです。タオルって元々はコットンで、コットンは綿花。綿花って農作物だから、口に入れても問題ないですよね。

だけど人間の手や機械が介在することで、いつの間にか口に入れられないものになっている。

ただそれだけだから、もとに戻してあげようと。「オーガニックに近づくことをやれば、口に入れても安全で、本来は食べられるタオルになるはずだ」って池内さんは言う。

タオルに本気で妥協していないんですよ。オーセンティック(本物である、信頼できる)なところが、めちゃくちゃ面白いなって思ったんです。

しかも2073年っていうのは、池内さんが今おいくつか存じ上げないのですが、たぶん生きていらっしゃらない歳なんですよね。

三代目社長の阿部さんも生きていらっしゃるかはわからないし、今のスタッフの方々だって定年退職していらっしゃるだろうし。私だって83歳ですよ。

だけど、「次の世代のために、今やってるんです」って仰る。

自分たちの世代だけで問題解決しようとしていない。〝次の世代のために、今、何ができるか〟に視点を定めている。

これはうちの会社と一緒だなっていうのが、僕が共感したポイントでした。次の世代が課題を解決するための下地やきっかけを作るっていうことも、ひとつの解決方法だと思うんです。

そもそも原価の高いタオルづくりは、ひょっとしたら経済合理性を欠くかもしれません。

けど、赤ちゃんの食べられるタオルを作るために必要な活動だと捉えている。理念そのものが次の世代の為にあるんです。

そのことに気づいた時に、何か一緒にできないかな?って心の中で思い始めました。

コットンヌーボー2018でコラボタオルをつくる

後日、もう一度池内さんに会う時間をいただきました。

すると池内さんが、「愛媛の人って、おいしいみかんを知らないんだよ」って仰る。地元の知人からもらうからです。

もらうものって余りもののことが多いので一級品ではないんですよ。だから、じつは愛媛の人は一番おいしいみかんを食べていない。そう池内さんは説明してくれたんです。

タオルにも同じことが言えます。今治ではサンプル品やB品をタオルフェアで投げ売りするので、多くの人は世の中に流通するタオルを使っていないんですよね。

いいものを作っているのに、自分たちが使うタオルはB品やサンプル品がほとんど。それでは地元の人に、本気のタオルは伝わらない。

だから、本当にいいタオルを、コットンヌーボーとコラボして作れないか提案したんです。
「今治の人にオーセンティックなタオルを使ってほしい」「赤ちゃんが食べられるタオルをつくるぞ」っていう、想いをのせて。

そのあとは、とにかく初速が早かったですね(笑)。「おっ、やりましょう!」と、いきなり企画会議になり、もうトントン拍子でした。

『コットンヌーボー2018 タオルマフラー FC今治コラボ』

しかも本来であればコスト削減や効率化のためにかなりの枚数を作らないといけないのに、イケウチさんもリスクを取って、僕らのリスクを極力減らしてくれたんです。

夢スポーツにとってコラボタオルにどんな意味があるかというのは、理念に共感しあう地元企業と手と手を取り合い、新しいチャレンジを一緒におこなう、ということでした。その結果生まれた商品を地元のファンの方々に使ってもらえることで「あ、地元にもこんな素晴らしい技術や熱意を持った企業があったんだな。今治ってやっぱりいいなあ」って地元の誇りを再発見してくれる。

そして、それが今治で生きる喜びに繋がる人がいるということは、お金には現れない「心の豊かさ」なのかなって感じました。

僕が一番うれしかったのは、タオルを買う文化のない地元の人が、今治のタオル愛し始めてくれているって感じられたこと。

もちろんこれまでも今治タオルの別のグッズを作っているんですけど、ファンの方々は「サッカーの応援グッズ」として買っているんですよ。

でもこのタオルの場合は、「今治にこういうタオルを作る会社があるんだ。イケウチさんってすごいね」って言ってくれる人たちが目に見えて増えたし、SNSでも反応がある。

女性は特にそうなんですけど、「シンプルで可愛くて、普段も使える」と言ってくれるんですよね。

お花見のシーズンに「サポーターが今治城でお花見をやるからのぞきに来て」って声をかけてくれたのでふらっと立ち寄ってみたら、みんながこのタオルを首に巻いていたんです。

お花見にこのタオルは全然関係ないんですけどね(笑)。気に入って使ってくれていることに、なんだか愛されているなって。

共通点は、信じる力

今年やったから来年もイケウチさんとコラボするかっていうのは、わからないです。

大事なことは、一緒に何か本気で取り組める相手が見つかったということ。
地元の会社が切磋琢磨して本物を作っていくというのは、いい製品ができあがること以上に価値があると思っていて。

イケウチさんと取り組んだ気持ちを忘れずに他の企業さんと接することで、こんなこともできるよって提案できるかもしれませんから。

イケウチさんとの共通点は、信じる力じゃないでしょうか?

自分たちが掲げた理念から、逃げない。それを信じる力だと思います。そして理念の為に一生懸命、試行錯誤する。

やっぱりみんなどこかのタイミングで「これは本当にできるのかな?」って諦めたり、「リスクがあるからやめよう」って思ったりするわけです。

けど、「2073年までに、赤ちゃんが食べられるタオルを作れるって信じています。農作物だからできる」って言う。

僕たちは心の豊かさを大切にする社会づくりに貢献すれば、ひょっとしたら、ここ今治から社会を良い方向へ変えていけるんじゃないかと信じているから、経済合理性だけでは説明できないことにもトライするわけで。

信じる力が、お互いの根幹にあるのだと思いますね。

FC今治 公式サイト / FC.IMABARI Official Site
執筆・写真:小松崎 拓郎(タクロコマ)/編集:藤村 能光

WRITER

1991年茨城県生まれ、ベルリン在住。フリーの編集者/フォトグラファー。「灯台もと暮らし」編集長、「もとくらの写真/現像室」オーガナイザー、オリンパスアンバサダー。

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