イケウチな人たち。

by IKEUCHI ORGANIC

好きな人たちと考える、これからの豊かさ

イケウチな人たち。について

豊かさを感じられる空間は、触れるものひとつひとつの「質」からつくられていく

- 銭湯「小杉湯」平松祐介・塩谷歩波 -

生活の余白に入り込む、豊かさを感じられる場所。

気づけば、心も体も忙しく生きてしまいがちな私たちは、潜在的にそんな場所を必要としています。

東京・高円寺に昭和8年創業された老舗銭湯「小杉湯」。

「交互浴の聖地」として知られるこの場所は、多い時で1日600人もの人が訪れる大盛況の銭湯です。

トークイベントや音楽フェスを開催したり、1ヶ月間無料で出展できるギャラリーを構えたりする小杉湯は、地域との関わりを感じられる場でもあります。

※交互浴(こうごよく):温かいお湯と冷たいお湯、交互に浸かる温浴方法。自律神経のバランスを整える効果がある。

小杉湯のビジョンは、「銭湯のある暮らし」をつくること。

3代目当主の平松祐介さんは、「銭湯は、日常における豊かな場所。豊かな場所をつくることは、暮らしをつくること」と言います。

そんな平松さんは数年前、SNSに銭湯のイラストを投稿していた塩谷歩波さんを見つけ、小杉湯のスタッフに誘います。

番頭兼イラストレーターの塩谷さん。今年2月に『銭湯図解』を出版

塩谷さんが小杉湯にやってきてからは、「スタッフからお客さまへのメッセージ」を載せた手書きポップが、銭湯内に置かれ始めました。

一般的には禁止事項の貼り紙があふれている温浴施設で、小杉湯のポップがあえて禁止と言わないのは、銭湯に期待される豊かさを損なわないため。

そんなある日、「タオルの利用方法」が描かれたポップがIKEUCHI ORGANICとつながり、オーガニックバスタオルが寄与される驚くべき出来事が起こります。

そしてバスタオルをきっかけに、小杉湯のモノやサービスが次々と「質」を変えていったのです。

「小杉湯が考える銭湯の役割」、そこに「IKEUCHI ORGANICのバスタオルが与えた影響」はなんだったのか。

おふたりにお話を伺っていくと、やがて豊かさを感じられる空間づくりのヒントが見えてきました。

禁止をうたわず、みんなが気持ちのいい空間をつくる

聞き手 くいしん(左)筆者 小山内(右)

―― 塩谷さんの手書きポップが、IKEUCHI ORGANICのオーガニックバスタオルとつながったということで。まずは、平松さんと塩谷さんの出会いからお聞きしてもいいですか?

平松:今から2年半前くらいでしょうか。当時僕が、描くもの自体に愛を持っていて、かつ手書きのイラストが描けるイラストレーターを探していたんです。

―― それはどんな理由から?

平松:小杉湯の利用方法やスタッフの想いを可視化するイラストを、銭湯内に置きたいという想いからです。

そもそも温浴施設は大衆にとって開かれた場所なので、みんなが気持ちよく過ごせるようにマナーを喚起する必要があるのですけど。その方法として、禁止事項の書かれた貼り紙を貼ることがすごく多いんですよ。

―― 禁止の言葉、公共の場ではたしかによく見かける気がします。

平松:僕は、銭湯を「日常において豊かさを感じられる場所」だと思っています。

銭湯は、昔は生活の基盤だったけれど、今はどの家庭にもお風呂が普及したから必ずみんがが通う場所じゃない。

「じゃあ、銭湯の役割はなんだろう?」と考えたときに、生活の余白に入り込む豊かな場所じゃないかと思ったんです。そしてそれをつくることが、暮らしをつくるってことだろうと。

……と考えたときに、その豊かさを期待される場所に禁止の言葉が並ぶことは、マイナスだと考えていて。

―― 禁止事項の貼り紙でなく「小杉湯のメッセージを込めたイラストを置く」発想になったのは、どうしてですか?

平松:僕はもともと、フジロックとか、キャンプ系の音楽フェスが大好きなんですけど。フェスが好きな理由のひとつに、世界観への共感があるんです。

その世界観を守ろうとみんなが思えたら、自然とマナーって守られるものだと、音楽フェスを通して思いました。仲のいい友人の家に行って、汚くしようと思わないじゃないですか。それとおなじ感覚です。

逆にマナーを守ってもらえないのは、こちら側の愛が足りないから。

小杉湯を大切に使ってもらうために、自分から愛を伝えようと思い、温かさを感じられる手書きのイラストが描ける人を、探していたんです。そんなときに、ツイッターで銭湯のイラストを投稿していた塩谷ちゃんを見つけました。

―― 塩谷さんは、いつから銭湯にハマっていたのですか?

塩谷:銭湯好きになったのは、体を壊して前職を休職していた頃でした。

偶然おなじタイミングで休職していた友だちに誘われた、というのがきっかけだったのですけど。行ってみたら、みるみる体調が良くなって、そこからいろんな銭湯を巡るようになりました。

塩谷:SNSに銭湯のイラスト投稿していたのは、私はもともと絵を描くことが好きだったので、「自分の好きなイラストで、銭湯に恩返しをしたい」という想いからでした。

そんな活動を平松さんが見つけてくれて、「うちのパンフレットを制作してみない?」と声をかけてもらったのが、一番最初のお仕事です。

1枚の手書きポップからやってきた、イケウチのバスタオル

―― 今、小杉湯には塩谷さんが手がけられた手書きポップがたくさん置かれていますよね。それが、イケウチとどのようにつながったのか教えてください。

平松:小杉湯は、開店前の時間を使ってヨガやトークイベント、音楽フェスなどを開催しているのですけど。

去年の2月にも、サウナサロンのイベントを開催したんです。

塩谷:そこに偶然、イケウチの牟田口さんが来て、タオルの利用方法が描かれたポップを見てくれて。

塩谷:そのポップを見ただけで牟田口さんは、小杉湯の「銭湯のある暮らしをつくるために、自分たちから愛情を表現している」ことを汲み取って、共感してくれたんです。

それで、「ちょうど倉庫に保管しているB品のバスタオルがあるので、有効活用してほしい」と言ってくれたんですよ。

平松:そんなことあるんだ! と驚きました(笑)。

牟田口さんの男気に応える、ではないですけど。バスタオルを貰ったあとは、塩谷ちゃんをイケウチの工場がある愛媛県今治市に送り込んで。

塩谷:今治で工場見学をさせてもらったのですけど、生産現場を見て、度肝を抜かされました。

「赤ちゃんが食べられるタオル」をつくるために、みなさん食品工場のように頭にキャップを身につけて作業しているんですよ。

みなさんのタオルに対する愛情やこだわりを見て、自分たちとすごく近いものを感じました。

それで「この熱意をちゃんと表現したい」と思って、イケウチのタオルができるまでの工程を図解したチラシをつくったんです。

チラシは、小杉湯の中にもイケウチの工場にも置いてもらっていて、工場見学の資料として使ってもらっています。

小杉湯で起きた“イケウチオーガニックシフト”

―― イケウチのタオルが来てから、何か変化はありましたか?

平松:もう全てが変わりました。小杉湯はですね、「IKEUCHI ORGANIC以前・以後」なんですよ。

もともと「いつでも、思いついたときに、気軽に、手ぶらで、小杉湯を利用してほしい」という想いがあって。

そのために、フェイスタオルは無料でバスタオルは40円で貸し出して、入浴も合わせて500円で収まるようにしていたり、待合室の漫画を話題の作品でそろえたり、ということはしていました。

平松:そこにイケウチのバスタオルがやってきて、小杉湯のモノやサービスの質がどんどん上がっていったんです。

イケウチオーガニックシフトが起きたんですよ。

―― イケウチオーガニックシフト?

平松:まず最初に何が起こったのかというと、今までよりも分厚いバスタオルだから、洗濯の回数が増えました。

バスタオルが本当に心地いいから、レンタルする人も増えたんです。そうすると、また洗濯をする回数が増える。結果的に、「自分はタオル屋なんじゃないか」と思うほどバスタオルを洗って畳んで(笑)。

結局、それじゃ回らないからスタッフを増やしたんですけど。

そのおかげで、閉店後の掃除もふたり体制から3人体制にできたりと、細かいところにも気が回るようになって、経営判断的によかったです。

洗濯をリネン業者に委託する手段もあったが、小杉湯ではバスタオルを40円で提供するため、建物の隣にあるコインランドリーで洗っている

―― 他にも変わったことはありますか?

平松:あとは、バスタオルの品質を守るために、洗濯用洗剤を変えました。

今は、植物性成分をつかった木村石鹸の「SOMALI」というものを使っています。

ボディソープとシャンプー、コンディショナーも、業務用の一番高いものに一新しました。山形に温浴施設のことを考えてつくられた浴室清掃用洗剤があるんですけど、それも仕入れたり。

塩谷:清掃用具もアップデートしています。

平松:今は、女性更衣室に化粧水と乳液、ボディクリームもそろえようと、準備を進めているところです。

ひとつひとつのモノから、生活の余白に豊かさを届けたい

平松:正直、時間的にも経済的にも今までよりコストがかかっています。

バスタオルひとつ取っても、洗濯に時間がかかるから、家族やスタッフからも「200円で貸してくれ」とは何度も言われているのですけど(笑)。でも200円で貸してしまったら、それはもう、暮らしをつくるではなくなってしまうので。

やっぱり、「銭湯のある暮らしをつくる」をいつも意識しているから、より豊かさを感じられる選択をしていきたい。

塩谷:お客さまからも、「最近小杉湯のアメニティがどんどん進化していて、本当に手ぶらで行ける銭湯になっちゃった」と嬉しい声も聞こえてきています。

小杉湯はイベントも頻繁に企画しているけれど、まずは細かいところに力を入れることが、圧倒的な満足度につながるんだと学びました。

―― 小杉湯のモノやサービスの充実度は、忙しい現代人にほど嬉しいものではないかと思います。

平松:小杉湯は、「銭湯のある暮らしをつくる」意識はずっとあったけれど、そのためにモノの質からこだわるようになったのは、IKEUCHI ORGANICのオーガニックバスタオルが来てからでした。

だからIKEUCHI ORGANICのバスタオルは小杉湯にとって、「目指すべき豊かさの象徴」なんです。

今、働き世代を中心にした銭湯・サウナブームが起こっています。

その背景には、毎日が情報過多で、コミュニケーションが複雑化していることがあります。SNSの発達で、個に対する負担がすごく増えているんです。

そういった中で銭湯に期待されるのは、デジタルデトックスの効果が期待できること。その状態で地域のコミュニティを感じ、頭にも体にも余白をつくれること。そういったライフスタイルを送れること。

銭湯には今、めまぐるしい日々の中でのサードプレイス的な要素が、求められているんじゃないかなぁと思っています。みんな銭湯に、逃げ込んで来ている状況なので。そうなったとき、最初の話に戻るんですけど、今の社会にあふれている「~~しちゃダメ」を言いたくないんです。

小杉湯としてやりたいのは、銭湯に来た人が一個一個のモノに対して、愛情や共感を感じられる状態をつくること。それが、その人が日々の生活に豊かさを取り戻すために、とても大切なことだと思うから。

小杉湯
小杉湯|杉並区高円寺の銭湯 [Twitter]
執筆:小山内 彩希/聞き手:くいしん/撮影:木村 雄司/編集:藤村 能光

WRITER

1995年秋田県能代市生まれ。編集者・ライター。大学3年次から株式会社Waseiにインターンとして所属し、大学卒業とともに入社。「灯台もと暮らし編集部」。あたらしい形の創作チーム「創作メルティングポッド」や女子にとって野球をもっとおもしろくする「NFB(日本女子野球機構)」を運営。

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