イケウチな人たち。

by IKEUCHI ORGANIC

好きな人たちと考える、これからの豊かさ

イケウチな人たち。について

生きることは、おしゃれすること。がんサバイバーが語る「心のおしゃれ」とは

- ファッションスタイリスト・谷山伸子×京都ストア店長・益田晴子 -

美容院に行った帰りや、お気に入りの洋服に袖を通した日。自分のことを「いいな」と思えた日は、なんだか気分が上がります。

「おしゃれひとつで気分が変わるよね」
「年齢やバックグラウンド、健康か病気かさえも、関係ないよね」

とある日のIKEUCHI ORGANIC京都ストア、こんなことを話す女性たちの姿がありました。

大阪を拠点に、関西で幅広く活動するファッションスタイリスト・谷山伸子さん。それから、イケウチの直営店である京都ストアの店長・益田晴子さんです。

3年前、京都ストアで出会ったふたり。以来、お店のスタッフとお客さまの関係を超えた「仲間」「家族」のような感覚で交流を重ねています。

谷山さんは、アパレル企業や百貨店の広告を舞台に、長いこと第一線で活躍してきた女性です。

現在はエシカルなファッションを心がけ、広告のお仕事だけでなく、パーソナルスタイリストとして一般の人たちに向けてファッションとヘアメイクのスタイリングを施したり、クローゼットやショッピングのアドバイスをしています。

そんな谷山さん、じつは、女性がんサバイバーたちによるアートプロジェクト「#❤︎know(ハッシュタグラブノウ・以下ラブノウ)」の代表でもあります。

ファッションスタイリスト・谷山さんのもうひとつの顔。それは、ご自身が乳がんと子宮頸がんを経験する、がんサバイバーであることです。

ラブノウが目指すのは、がんサバイバーの女性たちが笑顔で生きられる社会をつくること。

そのために、SNSやリアルイベントを通して、がんの正しい知識や自分たちの等身大の姿を発信をしています。

(ラブノウの活動のひとつである9フレームピック。谷山さんがサバイバーさんにメイクをした様子を9枚の画像にまとめ、Instagramに投稿している。写真:谷山さん提供)

禍福は糾える縄の如し。

良いことと悪いことは交互にやってくる、という意味のことわざがありますが、それはどんな状況にいる人にとってもおなじこと。

私たちの毎日に禍と福があるように、がんサバイバーの女性たちにも涙と笑いがあります。

そしてささやかな「福」は、「着飾るだけでなく、“心のおしゃれ”からも訪れる」ことを、谷山さんは教えてくれました。

タオルを標本のように置いているお店

谷山:晴子ちゃんとはもう10年くらい仲がいい気がするけど、まだ出会って3年なんですね。

益田:2016年の6月に、私たちの共通の友だちが、「晴子ちゃんに会わせたい人がいる。ぜったい気ぃ合う」って伸子ちゃんのことを京都ストアに連れて来てくれて。

そのとき伸子ちゃんは、白いお洋服を着ていたことを覚えてる。白い服がとてもキラキラして見えて、「すっごく明るいオーラの人がお店に来た!」という印象でした。

谷山:私はその共通の友だちから、「イケウチはタオルを標本のように置いているタオル屋さん」と聞いていて。「標本、なにそれ!」って、興味津々でやってきたんだけど。

お店に入って驚いた。

すごくスタイリッシュだし、晴子ちゃんから聞くタオルのストーリーや、“ワインのように愉しめるタオル”コットンヌーボーの説明を聞いたら、感動しちゃって。

もう買う! って気持ちになって、「コットンヌーボー2016」を購入したんだよね。そこからイケウチさんのタオルは毎年購入している。仕事で使うフェイスタオルのような小さいものからパジャマまで、うちはもうイケウチさんがいっぱい。

益田:イケウチのイベントにも、毎回来てくれているよね。

すごく覚えてるのは、伸子ちゃんが、はじめて来店したその日に話してくれたこと。

「自分はがんを繰り返したがんサバイバーで、そこからエシカルに関心を持つようになって、女性がんサバイバーたちによるラブノウという活動をやっている」というのをいっぺんに教えてくれた。

益田:はじめて会ったとき、それだけオープンに自分のことをお話してくれはったからこそ、私も伸子ちゃんに合うタオルを一緒に選べて嬉しかった。なにより、伸子ちゃんの生き方に共感したんだよね。

がんの再発、再々発を経て今の伸子ちゃんがある。私は伸子ちゃんが、がんサバイバーになってから10年以上経ってから出会ったけれど。こんなにパワフルに、楽しく生きていて。すごく格好良さを感じるし、だからこそ人にもパワーを与えられるんだって思った。

人に元気を与えることを天職のようにする人だな、って。

どんな人でもメイクひとつで気分が変わる

谷山:4年ほど前のことなんです。インスタ(Instagram)上で、おなじサバイバーさんの女性たちとつながったことがきっかけでした。

ラブノウのはじまりは、あるとき名古屋で、インスタでつながったサバイバーの女の子たち数人と集まりました。私はそこでみんなにメイクしたんですよ。そうしたら、集まった中のひとりが、メイク中に撮った写真を動画に編集して、YouTubeにアップしちゃった。

益田:どんどんメイクで変わっていく様子の動画よね。その動画見せてもらったときに、自分の病気と向き合っている人に対しての、思いが変わった。

谷山:その集まりを皮切りに、名古屋を拠点にラブノウがスタート。今は東京、名古屋、大阪の6人のメンバーで活動中。

私たちラブノウのアクションは、サバイバーモデルを募集してメイクショーイベントやメイク講習会をしその様子をSNSで発信するの。

じつは入院生活をしている時から、抗がん剤治療中の患者さんにウィッグのかぶり方や元気に見えるメイク方法などをアドバイスする“アピアランスケア”をしていました。それがラブノウのアクションにつながった。

※アピアランスケア:抗癌剤をはじめとする薬物療法の副作用による外見の変化(脱毛、爪、皮膚の変化など)、外科治療による創(きず)の変化などがもたらす患者さんのストレスを軽減するためのケア。

谷山:撮影用のメイクをしているわけではないから、見た目に大きな変化はないんだよね。

自分でできるメイクやおしゃれと、「日常がちょっとハッピーになりますように」という気持ちを伝えています。すると勇気を持ってモデルになってくれたサバイバーさんが少し前を向けたり自分に自信がついたり……なにより新しい自分に出逢えたりしてウキウキするじゃないですか!

おかげで、今までがんサバイバーであることを隠して生きてきた人が、ラブノウのイベントに参加してがんサバイバーであることをオープンにするようなった、という嬉しいメッセージもたくさん届いてるのです。

ラブノウのアクションはちょっとでも誰かの背中を押すことができているかな? と、思ったりしている。

メイクを行う谷山さん(写真:谷山さん提供)

益田:伸子ちゃん自身がサバイバーだから、おなじサバイバーさんのしてほしいことと、できることがわかるんだね。

谷山:私がサバイバーでもあるし、ヘアメイクもするスタイリストでもあるからできたこと。今まで続けてきた仕事が笑顔につながっていることがうれしい。

益田:歳を重ねていくことも考えたりすると、メイクで本当に気分が変わっちゃうよね。そこに、病気かどうかって関係ないんだと思う。

谷山:ほんとうに! がんであってもそうでなくてもメイクすることで笑顔になれる。そして、病気であっても楽しく日々を過ごしていいはずだから。

イケウチと「ラブノウ刺繍タオル」

谷山:ラブノウのいちばんの想いは、がんサバイバーの人たちに対する社会の障壁を無くしたい、というもの。

今は、ふたりにひとりががんに罹患すると言われる時代です。

そういった状況にも関わらず、がんと言うと「かわいそう」と決めつけられたり、正しい知識がない人に、がんサバイバーが心無い言葉をかけられたりすることがあります。

世の中にちゃんとした知識が浸透していないことで、がんサバイバーが生きづらさを感じる社会になっている問題があるんです。

それに対して私たちとしては、「がんになってもおしゃれして笑顔になれる」ことを少しでも多くの人に知ってもらいたい。そのために、SNSや協賛企業とのコラボイベントを通して、自分たちの等身大の姿を発信をしています。

益田:イケウチとのコラボも、伸子ちゃんがはじめて京都ストアに来店した日に、「再来月にイケウチでイベントがあるから、もしよかったら来ない?」とお声がけさせていただいたことからだったね。

谷山:そこで私は、池内代表にお手紙を書いて持っていき、イベントで晴子ちゃんから池内計司代表を紹介してもらい、ラブノウの活動報告をものすごい勢いでお話して。

池内代表に「なにか、ラブノウを応援してください」とお願いをした。

すぐに「OKです」とご連絡が来たから、もう驚き。しかも1週間後に刺繍型が送られてきて、「ラブノウ刺繍タオル」を作ってくれた。

谷山:イケウチさんにコラボをお願いしたのは、イケウチのモノの良さはもちろんなんだけど、なにより「イケウチの人たちが好き」っていうのが一番だったんだよね。

「もしもイケウチさんがラブノウに共感してくださるなら、いつもそばにいてほしい。がんサバイバーのみんなも、イケウチさんのような会社がサポートしてくださったら嬉しいんじゃないか」。

そんな気持ちがありました。

イケウチの人たちへの共感は、コラボしていただいたあと今治オープンハウスに行って、さらに高まりました。寡黙な職人さんたちが自信満々に仕事への想いを話す様子を見て、そのトークが上手い下手ではなく、「素敵だな」と感じたんです。自分の仕事に誇りをもっていることが伝わってきた。

イベントにも毎回顔を出すうちに、「もうイケウチで働きたい!」ってくらい、私はイケウチの人たちが大好きに。

それでもやっぱり一番最初は、晴子ちゃんだね。

晴子ちゃんがタオルへの想いを伝えてくれて、私の話も聞いて、それを代表にまで繋いでくれた。そして、いつも温かい声をかけてくれた。そこから私のイケウチの人たち愛に繋がっていったんだと思う。

心のおしゃれから日々が豊かになっていく

谷山:病にかかると、なにがしんどいかって、心がすごくしんどいじゃないですか。私はラブノウで関わるみんなに、「笑って!」と言うんです。

益田:それを伸子ちゃんは、病気か病気じゃないか関係なく伝えているよね。

私、今でもすごく印象的だったのが梅田阪急で偶然、伸子ちゃんと会った日のこと。

益田:化粧品売り場で伸子ちゃん、どなたかになにか相談されていて。そんとき「笑って、笑って!」とお相手の方に言ってたの。そこでも「笑ってと言ってるんだなぁ」って。

谷山:
でもね、「ちゃんと家帰ったら泣いてね」とも伝えてるんですよ。それは、泣かないと、笑えないと思っているから。

なぜファッションスタイリストの私が、笑ったり泣いたりすることまで大事と思っているかというと、私にとっての生きることが、おしゃれすることとつながっているから。生きることは、おしゃれすること。これが私にとってのおしゃれ。

おしゃれって着飾ることだけじゃない。洒落っ気のある人とか、チャーミングな人とか、言うじゃない。「心のおしゃれ」っていうのがあって、それがすごく大切だと思ってるんです。

泣いたり、笑ったりも、ひとつの心のおしゃれ。ちゃんと泣く、ちゃんと笑う、そういった心の様相に伴って、いろんな選ぶもののチョイスも変わっていくから。

谷山:私は昔、ハイブランドなものだけじゃなく、毎日のようにファストファッションを買っていたこともあるんです。そして飽きたら捨てるんですね。

今なら「なんかおかしいよな」って感覚なんですけど。そのときは、毎日違うものを着ていることがおしゃれだって思っていました。

だけど、がんになって、オーガニックコットンのTシャツ着たら、やっぱりこういう生産背景に納得できるモノの方が気持ちがいいと感じたりなんかして。

今日着ているのはアウトサイダーアートのファッションブランドのお気に入りの洋服なんです。6年ぐらいになるかな……とてもだいじに着ています。

また、手術をきっかけに仕事をセーブしたので、広告の仕事が減りました。けれどその代わり、一般の方へのパーソナルなスタイリングは増えたんです。そして、コーディネートやメイクで一般の方がハッピーになれる後押しをできることが、私にとって、とても豊かに感じられるんだとわかった。

今、収入が減ったのに(笑)、すごく心が豊かなんですよ!

心のおしゃれは、自分自身を素敵であると思えること。そこに、がんサバイバーであるかどうかは、関係ないですよね。

取材を終えて

じつは筆者も10代の頃、病気で車椅子生活になり、いろんなことを諦めざるを得なかった経験があります。

病気になったとき、ひどく落ち込み、先の見えない不安に打ちひしがれました。けれど同じくらい、じつは些細なことで笑ったり、次の日には忘れちゃうようなことで怒ったりもしていたんです。

人らしい多面的な感情が、当時の自分にもちゃんとあった。それは私が「病気の人である前に、ただの人であった」証拠なんだと、取材を終えた今、思います。

谷山さんが、がんサバイバーの女性たち含め、関わる多くの人たちに伝えているのは、「ちゃんと笑って、ちゃんと泣くんだよ」ということ。

そうやって嘘がない健やかな心の自分でいることを、谷山さんは「心のおしゃれ」だと言いました。また、「心のおしゃれは、自分で自分のことを素敵だと思えること」だとも。

ラブノウの想いとして、「ちゃんとした知識が浸透していないことで、がんサバイバーが生きづらさを感じる社会になっている。社会の誤解を失くしたい」というお話がありました。

がんサバイバーの人もそうでない人も、自分自身を素敵だと思える選択ができる人が増えたら、生きづらさを抱える人は減っていくんじゃないか。

一人ひとりが心のおしゃれを大切にすることから、きっと社会全体までもがより良く変わっていく。今回の対談を通して、そんなことを考えました。

#❤️know (ハッシュタグラブノウ)
愛知発信の女性がん患者が活動するグループです。【愛=LOVE ラブ 知=KNOW ノウ】は、「病気と闘ってる女性がみんなとハッピーに闘病できたらいいな」とっていう想いから2016 instagram スタートしました。がんサバイバーの女性が笑顔で生きる社会を作るために!と立ち上がったアートプロジェクト。Instagramはこちら。 @loveknow2016

執筆:小山内 彩希/撮影:木村 雄司/編集:藤村 能光

WRITER

1995年秋田県能代市生まれ。編集者・ライター。大学3年次から株式会社Waseiにインターンとして所属し、大学卒業とともに入社。「灯台もと暮らし編集部」。あたらしい形の創作チーム「創作メルティングポッド」や女子にとって野球をもっとおもしろくする「NFB(日本女子野球機構)」を運営。

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