イケウチな人たち。

by IKEUCHI ORGANIC

好きな人たちと考える、これからの豊かさ

イケウチな人たち。について

お店は地域の住民が「なりたい自分」になるために存在する。福岡・六本松 蔦屋書店の店作り

-「六本松 蔦屋書店 店長」南原尚幸-

インターネット消費時代。NetflixのようなオンラインコンテンツやAmazon、楽天といったネットショッピングが普及し、人々は今やオンラインで日常的に時間とお金を使うようになりました。解釈の仕方によって、リアル店舗は、存続の意義を問われています。そんな昨今において、街の人々に愛され、「イケウチな人たち。」編集部が訪ねた日も、朝から夜まで賑わうお店があります。

福岡市にある「六本松 蔦屋書店」です。六本松 蔦屋書店が地域の人々から愛される理由は、地域の埋もれている資産に光を当てているから。博多発の万能調味料である「ニワカそうす」は、累計4,000本を売り上げる六本松 蔦屋書店発のヒット商品です。

IKEUCHI ORGANICの「オーガニック732」の愛用者でもある、六本松 蔦屋書店・店長の南原尚幸さんは、どのようにして地元の人々に愛される店作りをしているのか。そして、地域発の熱狂にこだわるのはなぜか。

愛媛県今治市という地域に必要とされる存在になりたい──。そんな想いで、お伺いしました。

(写真左から、牟田口武志、南原尚幸さん)

聞き手は、かつてTSUTAYAで南原さんと共に働いていたIKEUCHI ORGANICの広報・牟田口が務めます。

狂気とは、好きになるきっかけである  

南原 イケウチさんのタオルのタグ、好きなんですよね。

牟田口 ありがとうございます。

南原 タオルをフックに掛けていると、このタグが絶対に見える。すごいなと思ったのが、タオルを折って使う時にも、タグがかさばらずに納まるようになっているところ。

牟田口 そう言われてみると、タオルを真ん中で折って使う時に、タグが邪魔になると思ったことはないですね。

南原 タグが真ん中にあるのに、たたむ時にタグが絶妙な位置に来るようになっているなんて、狂ってるなぁと思って。狂気って、より好きになるきっかけになると思う。本当に好きでこのタオルを作ってるんだろうなって、思い込みにまで派生させるほど(笑)。

牟田口 南原さんは細部へのこだわりが好きですよね。

南原 めちゃめちゃ重要だと思います。あのタグのおかげで毎回使うたびに「あぁ、イケウチオーガニックのタオル使ってる!」っていうマインドになります。いいものを使ってるなって、日常のなかでテンションが上がるきっかけになるんですよね。だからタオルのタグを考えた人、すごいですね。

牟田口 ナガオカケンメイさんです。

参考:D&DEPARTMENTに聞く「モノの選び方の現在」。これから僕たちは、何をどう選んでいく?- 「D&DEPARTMENT」 ナガオカケンメイ・黒江美穂

南原 だってタグを付けるの面倒くさいでしょう?

牟田口 ほんとそうですね。オーガニックコットンではなくポリエステルにすれば、タグは曲がらないんです。だけど赤ちゃんが口に含んでも安全なように、タグの素材もオーガニックコットンにしています。

南原 たとえタグが化学繊維であろうが、すげえいいタオルだろうなっていう刷り込みもある。

牟田口 ……(笑)。その刷り込みはどこから来るんですか?

南原 イベントとかで池内代表の話を何回か聞いていて。根本的にものすごくいいものを作ろうとしてるし、僕が思っている以上のもっと違う次元までこだわってタオルを作っているから、目の届かないところまでちゃんとやってくれている絶対的な安心感があります。

牟田口 代表の池内も音楽が好きでTechnicsというオーディオブランドのプランナーだったので、音楽狂の南原さんが共感するところもあるんですかね?

南原 池内さん、ビートルズ愛がすごいよね。なにか一つ突き抜けている変態的な深さがある人って、それだけで信用できる。そういう人が代表として「うちのタオルはいいんだ」って自ら公言している会社は、じつは多くない。そのことにはすごく憧れますね。

インターネット消費時代にお店を作る意義

牟田口 僕が九州で南原さんと働いていた15年くらい前まではレンタルビデオとレンタルCDの時代で、それらがTSUTAYAの売上の柱だったじゃないですか。ところが今は状況がガラッと変わって、Netflixとかオンラインで楽しめるコンテンツが出てきています。

南原 最近Netflixは観るようになった。めちゃくちゃいいよね。あっ、TSUTAYA TVも素晴らしいです!

牟田口 そうですよね。なんでもウェブで手に入るようになった今、お店を作る意義をどんなふうに考えていますか? これだけ広いお店を作るのは大変なことだと思います。

南原 TSUTAYAの核は僕がずっとバイヤーやMDをやってきたレンタルだという想いもあり、特に音楽レンタルには16年近く従事してきました。もちろん、今もすごく想い入れはありますが、六本松 蔦屋書店をやっているとニーズの変化を感じることができます。

牟田口 TSUTAYAに対する世の中の見方が変わってきていると思っています。 これまでTSUTAYAはエンタメ文化を育む場所でしたが、役割が変わりつつあるのではないかと。

南原 楽しみ方や切り口が時代時代で変わるだけで、本業のライフスタイル提案をすることには変わりないです。
六本松では地元のレトルトカレーや醤油が飛ぶように売れたり、限定のTシャツなんかが即完したりして、「あれ?何屋だっけ?」と思うこともあります(笑)。が、そのモノ自体にもカルチャーがあるので、そこに共感していくことは映画や音楽、本と一緒だと思います。

ライフスタイル提案において、今まで我々の強みだった映画や音楽は、「なりたい自分」や「憧れ」という人格形成に寄与する感覚的な提案であるの対し、雑貨やモノではその憧れを自分の生活に取り入れて即楽しんでもらう直接的な提案だなと感じます。

また「音楽を楽しむ」という提案においては、「毎日がレコード市」という竹内まりやの曲名みたいな企画を、オープンからずっとやっています。

サブスクのように気軽に便利に楽しむ対極として、レコードって大きなジャケットから円盤を取り出して、プレイヤーに置いて、針を落として~みたいな手間自体を楽しめるし、何よりも「さぁ、聴くぞ!」っていう儀式めいたものがありますよね。今だからこその価値観だと思います。イケウチさんのあのタグのおかげで、さぁこのタオルを使うぞってのに似ています。

お店を通じてその人の好きなもの、テンションの上がるものを見つけられることがこれからの豊かさかなと思いますし、それで熱狂してる人が増えていってくれたら最高ですね。

牟田口 六本松 蔦屋書店は好きなものや好きな人と出会える場になったらいいですね。

「毎日がレコード市」と題し、全国の選りすぐりのレコードショップ(毎月変わります!)がセレクトした中古レコードと、音楽コンシェルジュの独自セレクトによる新品レコードを販売しています。

取材の当日は、20年以上修理を繰り返し大切に着ているカバーオールも持ってきていただきました。

地元の人々に愛される店の作り方

牟田口 六本松 蔦屋書店が他の蔦屋書店と異なるのは、地域のまちづくりをより強化しているところでしょうか?

南原 そうですね。地域のまちづくりや文化貢献を実現しないと、ここに蔦屋書店がある意味がない。六本松 蔦屋書店では「マイスタンダード」というコンセプトの中に「グッドローカル」というキーワードを入れているので、音楽や本はもちろん、特産物や工芸品も扱いながら、九州色とか福岡色、地元のカラーを出しています。

牟田口 南原さんはバイヤー時代から定番でロングセラーの商品を大切に品揃えするイメージがあります。

南原 セレクトの基準は、まず自分がいいと思うかどうかです。これは変わりません。ロングセラーは長く売れ続けることだけど、うちでは誰も知ってくれていないものでもしつこく言い続けて、提案してる感じです。それが長く売れ続けるようになったら嬉しいです。

牟田口 自分がいいと思ったものを伝えるためは、何度も伝え続けるということですね。

南原 はい。ボヘミアンズというバンドはこの10年間ずっとレコメンドし続けています(笑)これはおそらく世界一の自信もありますし、一生続けます。

南原 グッドローカルの象徴は、博多のタケシゲ醤油さんが作っている万能料理ダレの「博多ニワカそうす」。うちがオープンする前にタケシゲ醤油の社長夫妻とお会いする機会があり、「博多で260年を超える歴史があります」って言われたんですけど、全然知らなくて・・(笑)。じつは、それまでニワカそうすは、ほぼ市販されていないものでした。

牟田口 法人向けだったんですね。

南原 そう、ニワカそうすは、料亭や業者さん向けに卸されている商品でした。卸先で働いていた従業員の方々はニワカそうすをおすそ分けしてもらって、ご家庭で朝から晩まで使っていたらしいんですけど、ある時卸先の会社がなくなってしまって、そうすが手に入らなくなってしまったそうで。「このタレがないと料理ができないから困る」と、タケシゲ醤油さんに問い合わせが集中した時期があったんですね。そんな背景を知ったら、これは福岡になくてはならないものだと確信して。

牟田口 今話を聞いただけでも、伝えたくなりました。

南原 タケシゲ醤油さんに六本松 蔦屋書店のオープニングのプレゼントとしてニワカそうすとオリジナルの冊子を用意して頂き、それがお客さんの支持を得てあれよあれよと計4,000本売れたんです。これからも地域に根付いているグッドローカルなものをどんどん見つけていきたいですね。

また一番印象的だった事があります。もともとこの場所には九州大学があって、その跡地に蔦屋書店の建物ができました。よってかつては学生街だった街並みが激変しました。

新しい施設ができて賑やかになる一方で、昔からここに住んでいる人たちには違和感や喪失感がある方々も居て、未だに馴染めないんですという声を聞いたことがありました。そんな中、オープン1周年の際に蔦屋書店の裏手にあるロクヨンストリートと呼ばれる一画のお店の人たちと一緒に六本松の「あの頃と今」を繋ぐ「ロッポンマツメモリーズ」という写真展企画をやったんです。

昔の写真を地元の方々の協力を得てたくさん集めて、年表を作ったりして。この写真展を通じて地元の方々との座談会で昔話に華が咲き、そして今からこの地を盛り上げる若者たちも入り交じり、ようやく新参者の我々も仲間入りできたと思いました。この地域で何ができるかをじっくりと考えていきたいと強く思いました。

牟田口 マイスタンダードとグッドローカル。六本松 蔦屋書店がこれだけ地域に入り込めている理由がよくわかった気がします。今後はこのお店をどうしていきたいですか?

南原 さらにこの地域で何ができるかをじっくりと考えて街と共に変化していきたいです。もちろんエンタメの初期衝動を提供し続けていき、「この街に住みたい」「この街に住んでいてよかった」と思われるようにしていきたいし、それこそが、お店だからできる役割だと感じます。

お知らせ:突然ですが、IKEUCHI ORGANIC FUKUOKA STOREは2020年7月末をもって閉店することになりました。今後は福岡においては六本松 蔦屋書店がIKEUCHI ORGANICの思いを継いでいただきます。2020年7月より、IKEUCHI ORGANICの常設展が始まりますので、是非足を運んでみてください。

詳細についてはこちらをご覧ください。

六本松 蔦屋書店

執筆:小松崎 拓郎/撮影:木村 雄司/編集:藤村 能光

WRITER

1991年茨城県生まれ、ベルリン在住。フリーの編集者/フォトグラファー。「灯台もと暮らし」編集長、「もとくらの写真/現像室」オーガナイザー、オリンパスアンバサダー。

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