イケウチな人たち。

by IKEUCHI ORGANIC

好きな人たちと考える、これからの豊かさ

イケウチな人たち。について

人が動く理由が共感に引っ張られ始めている。“共感”を資本とする社会へ

-橋本卓典×新井和宏×池内計司-

現在、至る所で、“行かない革命”が起こっています。

お店に行かなくても、ネットショッピングで必要なものをそろえられる。
街に行かなくても、ネット上で様々なコンテンツに触れ、楽しく過ごせる。
職場に行かなくても、リモートワークで、円滑に仕事ができる。

家の中にいても生活のほとんどのことが事足りてしまう。そして、この流れはテクノロジーの進化によって、ますます加速していくことでしょう。「ベーシックインカム」という言葉がありますが、近い将来、わざわざ生活のために働く必要はない世の中に本当になるかもしれません。

そんな時に、人が行動を選択する時の思考は至って単純になるのではないでしょうか。

やりたいことをやる”。これ以外はないでしょう。

「自分もその活動の輪に加わりたい」と思われる企業に人が集り、お金があっても共感を集められない企業は苦しくなっていくことが容易に想像がつきます。

共感こそが、これから企業が生き残っていく上で重要な資産なのではなかろうか?

そんな問いを掘り下げるために、IKEUCHI ORGANICでは、2018年9月8日に京都ストアでトークイベントを開催。

ゲストは、共同通信社経済部記者であり、IKEUCHI ORGANICのことを「ウソのない会社」として紹介している書籍『金融排除』(幻冬舎新書)の著者の橋本卓典さん。そして、モデレーターは「共感資本社会の実現を目指す」を理念に掲げる株式会社eumo代表取締役の新井和宏さん。このふたりに、IKEUCHI ORGANIC代表の池内計司を交えて行いました。

共感を育んでいる企業と、共感を重要な資本と捉えていない会社では明確に差が出てくる」と橋本さんは言います。その理由とは、なんなのでしょうか?

人が働く理由が、共感に引っ張られ始めている

新井さん:今日は「共感こそが会社の資本になってきている」というテーマで話ができればと思います。

僕は、これまで全国の色々な会社さんを拝見させていただいているのですが、黒字なんだけど倒産という会社が結構あるんです。なぜかというと、人が採用できないからです。

新井和宏(あらい・かずひろ)さん。株式会社eumo代表取締役。1968年生まれ。東京理工大学工学部卒。2010年3月より運用を開始した投資信託「結い2101」の運用責任者。特定非営利活動法人「いい会社をふやしましょう」理事。著書『投資は「きれいごと」で成功する』(ダイヤモンド社)、『持続可能な資本主義』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

新井さん:目の前に仕事があるにも関わらず、やりたい人がいないという状態が出来あがってしまっているんですね。

ベーシックインカムという言葉がでてきて、お金のために働かずにすむようになってくると、人が仕事をする理由は「自分がやりたいかどうか」が全てになります。

ということは、「その企業がやっていることを応援したい」とか、「その企業がやっていることに自分も加わりたい」といった、強い共感が大切になってくるのは間違いありません。

橋本さん:本当にその通りで、これから伸びてくる企業というのは、なんらかの共感を生んでいる企業だと思います。

橋本卓典(はしもと・たくのり)さん。共同通信社経済部記者。1975年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。2006年共同通信社入社。経済部記者として流通、証券、大手銀行、金融庁を担当。09年から2年間、広島支局に勤務。金融を軸足に幅広い経済ニュースを追う。15年から二度目の金融庁担当、16年からは資産運用業界も担当し、金融を中心に取材

橋本さん:例えば、新井さんの前職である『鎌倉投信』は、本当にすごいと思いました。

鎌倉投信の受益者総会に参加するとビックリするのが、鎌倉投信のお客さんが受付をやっているんですよ。鎌倉投信の「いい会社をふやしましょう!」という理念に共感して、お客様という立場を超えて、一緒に活動へ参加している。これこそが共感だと思いました。

新井さん:ありがとうございます。いろんな投資信託がありますけど、お客様が受付をしてくれるようなところなんて、どこにもありません。これは完全に自慢です(笑)。

橋本さん:こういう動きを見ていて私が思うのは、会社の選び方、働き方、生き方が、共感に引っ張られ始めているということなんです。

ここ最近、副業を始める人や、副業制度の実施について議論をする会社が増えてきましたよね。本来、副業というのは、自分の関心があることに自分の働く時間を使うことだと思います。例えば、本業ではないけど、前からやってみたかったこととか、地域にとっていいこととか。

つまり、自分の時間を自分の共感するものに投資しようという判断をする人が増えてきているということなんですよね。

新井さん:そうですね。働き方改革の本質は、我々の働き方が「自分が共感するもののために働こう」という風に変わっていくことなのではないかと私も思います。

信用ではなく、共感で働く会社は強い

橋本さん:共感について理解を深めるために、信用と共感は違うということについて、話をさせてください。

橋本さん:信用が大事だという言葉は、昔からよく言われています。でも、信用というのはあくまで契約社会。すごくドライなんです。これを中国で今起こっていることを例に説明します。

現在、中国の都市圏では、給料日になると口座から全額を引き下ろして、すぐにアリペイにチャージする人がほとんどなんだそうなんです。銀行にお金は残していない。なぜなら、アリペイの方が金利が4%で、銀行は2%だからです。

そして、アリペイはユーザー個人をスコア化して、良い行動をすると、その人のスコアが上がる仕組みを作りあげています。つまり、誰が信用のある人なのかがわかるようになっているんです。そしてスコアの高い人ほど、良いサービスを受けられます。

新井さん:すごい仕組みですよね。

橋本さん:中国は、これまで疑心暗鬼の世界で生きてきました。靴や自転車を見張る仕事なんてものもあるくらいです。

でも、これからは信用を下げる行いをするとスコアが下がってしまう。見張りをする必要も無くなるし、約束を守る人が増えるので心配事が減るわけです。信用社会になることで無駄なコストがなくります。

橋本さん:では、中国の現状は素晴らしいかというと、私はそう思いません。

なぜなら信用の社会というのは契約の社会なんです。1万円払ったら、1万円のサービスで返すという世界。それ以上はやらない。信用というのはどこまでいってもドライなんです。

一方、共感というのは、1万円のものに、それ以上のものでお返しをすることがあります。例えば、いただいた贈り物に対して、それ以上のものでお返しをすることってありませんか。これって、心の共感なんです。その人との関係をいいものにしたいから自然とやっているわけですよね。

新井さん:なるほど。共感は等価交換を超える価値を創出するわけですね。

橋本さん:そうです。つまり、信用で働いていた場合、従業員と企業の関係は、契約に記載されている内容に沿った仕事をし、額面通りの給与を受けとるというドライな間柄になります。

しかし、共感で働く場合は、契約以上の働きを発揮する可能性がある。しかも嫌々やるのではなくて、やりたくてやっている。この違いって大きいと思いませんか?

このように共感と信用は違うんです。いかに共感を育んでいくことが、これから重要になります。

共感で集まってきた社員が、長く働けるように

新井さん:企業がこれから生き残っていく上で共感が大切だと話してきましたが、池内さんはどのようにお考えですか?

池内:う〜ん、僕らも生き残れるかわからないから、なんとも言えないなぁ…(苦笑)。

池内計司(いけうち・けいし)。IKEUCHI ORGANIC代表。1949年愛媛県今治市生まれ。一橋大学卒業後、松下電器産業(現パナソニック)に入社。松下電器産業時代は、世界中のDJ から支持された名機「Technics」ブランドのプランナーとして活躍。1983年に家業を引き継ぐため池内タオルに入社し、代表取締役社長に就任。2016年6月から、ものづくりに専念するため現職

新井さん:そこは生き残ってくださいよ(笑)。

池内:でもひとつ言えるのは、僕らのような会社は、人から選ばれる会社であり続けないと生き残れません。そのためには、価値を感じるに値する事業ポリシーを掲げることが大切だと思います。

新井さん:IKEUCHI ORGANICは、まさに共感で人が集まってきていますよね。

池内:ありがたいことに、そうですね。ここ10年で、僕らの企業規模からしたら考えられない優秀な人たちが入社してくれました。

そして、そういったメンバーが会社を卒業しないといけないという事態を避けるためにも、これから、働き方改革を始めるんですよ。

ウチはタオル会社の中では圧倒的に休みが多いんですが、場合によっては、もっと休んでも良いというようにしたい。在宅で働くこともある程度できるようにしたいし、働きながら大学院に行けるようにしたいなぁと。

橋本さん:すばらしいですね。人によっては大学院に行く人もいるし、フレックスで働く人もいる。働き方はバラバラだけど、共感する目的に向かって集まっている。それで良いと思うんですよね。

池内:ウチの社員が感じているやりがいの深さは、他の会社の方々と比べて高いだろうとは感じています。僕らの商品を使っていただいているファンの方々が工場まで来てくれて、お客様の顔が現実に目に見えたりするので。

なので、やりがいが感じられる仕事を長く続ける仕組みを作り。これに現在挑戦し始めています。

共感が育まれているのかを、どう測っていくか?

新井さん:あとは、「共感をどうやって計測していくか」も大切になってきますよね。

橋本さん:そうですね。企業は、どうしても売上や利益、客数といった目に見える部分に意識がいってしまいますからね。

例えば、こういうシーンを想像してみてください。

ある月に、来店した人が20人いて、うち19人がおまけ目当てで来店し、その店が好きで来てくれた人が1人だけだったとします。そして翌月には、おまけ目当ての人は消え、お店が好きで来てくれた人が10人だったとしましょう。

数字だけ見ると月間の客数は減りました。業績が落ちているように見えます。でも、本当にそうだろうか? そのお店にわざわざ行きたいと思うお客さんは増えています。これはお店にとって望ましいことではないだろうか。

我々は、こういうことをどう評価すべきかを真剣に考える時期にきていると思うんです。

新井さん:『金融排除』の次に書かれている本『捨てられる銀行3 未来の金融 「計測できない世界」を読む』では、こういった共感を測る方法をテーマにしているんですよね?

橋本さん:そうなんです。例えばクチコミが豊かになっていることを示すひとつの指標として『NPS(Net Promoter Score)』というものがあります。海外の会社では、こういう指標を測定して、経営において重要視している企業が結構あるんです。

共感が育まれているかどうかを、どうやったら我々は認識できるんだろうか?

それが、今の私が抱える問題意識です。

目で見ているものを、そのまま受けて入れてはいけない

新井さん:最後に橋本さんからメッセージをお願いします。

橋本さん:今日は共感が大事だという話をしてきましたが、皆さんには、見えているようで見えていない物事の本質について考えていただきたいと思っています。

橋本さん:例えば、学校に「廊下を走るな」という張り紙が貼ってあったとします。これは、見えている世界だけで捉えると「廊下を走るな」という単なる注意書きです。

でも、その張り紙は、そんな張り紙を貼らないと走ることをやめさせることのできない教師と子供の関係性を物語っていると思うんです。

目で見ているものを、そのまま受けて入れてはいけません。

共感だってそうです。我々は、共感とは何かを考え続けないといけない。今日のイベントが、そんなことを考えるきっかけになったら幸いです。

新井さん:ありがとうございます。最後に僕からも一言いわせてください。

新井さん:是非、京都のこのお店を愛してください

ここを支えているのは、愛以外の何ものでもない。IKEUCHI ORGANICに共感いただいている皆さんが、こうやって支えてくれて、成り立っているのだと思います。

いつも思うんですけど、本気で良いことをやっている会社さんは、当たり前ですけど原価率が高いんですよ。だって、本当に良いものを提供しようとすると、様々なところにコストがかかるんです。だから、すごく大変。僕が見ても嫌になるくらい厳しい中でやっている。

でも、この仕組みを支えているのは、やっぱりお客さんなんですよ。この愛すべき会社が、まだ見ぬ子供たちに繋げられるかは僕らにかかっていると思うんです。

是非、今後もIKEUCHI ORGANICの京都ストアと末長くお付き合いください。京都ストア店長の益田に代わって申し上げます(笑)。

***

今回のイベントに参加し、共感というものの大切さを改めて強く感じました。

そして、共感を大切にする社会が訪れることで、きっと優しい未来になっていくのではないかと信じています。

なぜなら、共感を生むということは、他者の心に訴えかけ、相手の感情を動かすことですよね。そう考えると、社員、お客様、取引先、地域の方々など、企業を取り巻く様々な相手に対して、誠実さが求められると思うんです。

企業として誠実であるとは、どういうことだろう――?

そんなことを各企業が大切に考えていく未来は、きっと優しい社会なんじゃないかと思います。

そんな未来の訪れを願って、自分もその未来の一員として誠実でありたいなぁと思った次第です。

橋本さん、新井さん、ありがとうございました!

未来の金融 「計測できない世界」を読む (講談社現代新書)
執筆・写真:井手 桂司/編集:藤村 能光

WRITER

1984年、熊本生まれ、埼玉育ち。ブランドエディターという肩書きで、企業の持っている物語を多くの人の心に届けるお手伝いをさせていただいています。オーガニックそのままに個性的なIKEUCHIの人々がチャーミングで大好きです。IKEUCHI ORGNIC 公式 noteの編集も担当しています。

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