イケウチな人たち。

by IKEUCHI ORGANIC

好きな人たちと考える、これからの豊かさ

イケウチな人たち。について

“誰も犠牲にしないものづくり”って何だろう?「奇跡のリンゴ」の木村秋則さんに会いに弘前へ

「誰も犠牲にしないものづくり。」

IKEUCHI ORGANICでは、これを合言葉にものづくりを続けています。

こだわり抜いたタオルをつくる一方で、コットン生産者の方々が泣いていたり、製造による環境汚染により未来にツケが回っていたら、どうだろうか? そんな状態で、心地よいタオルを提供していると胸を張って言えるだろうか?

自分たちも、つくり手としての責任を果たそう。

この想いのもと、イケウチでは生産者の方々と共に歩んでいくためのフェアトレードや、グリーン電力の利用、製造による廃液の浄化など、「最小限の環境負荷」を念頭に置いたものづくりを推進してきました。

そして、この「誰も犠牲にしないものづくり」を、リンゴ栽培で実現するために奮闘されている方がいます。

その人は、木村秋則(きむら・あきのり)さん

NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』や、映画にもなった書籍『奇跡のリンゴ』など、木村さんの挑戦は様々なメディアで伝えられています。

人の手によって品種改良が加わった現在のリンゴにおいて、栽培には農薬が不可欠。

その誰もが信じて疑わなかった常識に挑み続け、ついには「奇跡のリンゴ」と呼ばれる完全無農薬のリンゴ栽培を実現しました。

木村さんが、リンゴの無農薬栽培に挑戦する背景には、農薬に苦しめられるリンゴ農家への想いがあったと言います。それは、奥さまが、農薬に過敏な体質で、「妻に辛い思いをさせないですむようにしたい」という願いから始まったそうです。

しかし、木村さんの、無農薬でのリンゴ栽培の挑戦は、想像を絶する苦難の連続でした。

醤油、牛乳、酢など、農薬に変わる“何か”を探して試行錯誤の日々を重ね、やがて収入はなくなり、どん底生活に突入。一時は全てを諦め、死を決意したことも…。

壮絶な孤独と絶望を乗り越えた末に実現したのが「奇跡のリンゴ」なのです。

現在、木村さんは無農薬のリンゴ栽培を普及するための活動にとどまらず、様々な分野における無肥料・無農薬・無除草剤の自然栽培農業指導のため、国内外を飛び回っています。

木村さんと、池内代表。同世代のふたり

そんな木村さんと、IKEUCHI ORGANICの池内代表は、昨年6月に池袋天狼院書店で行われた『夢を諦めずに挑戦すること』というトークイベントで初めて対面しました。

実は、ふたりは同年代で、年齢は池内代表が木村さんのひとつ上。しかも、ふたりともビートルズの大ファン

もちろん、誰も挑戦したことのない夢に挑戦してきたふたりだからというのもあるのでしょうけど、ビートルズ談義にも花が咲いて、すぐに意気投合。

今年の実がなったら、弘前にある木村さんのリンゴ畑に、リンゴを食べに行きます。

その場でこう約束し、リンゴの実がなった昨年11月に、約束通り、訪れることになりました。

芯まで美味しく食べられるリンゴ

リンゴで有名な青森県弘前市。それを見下ろす岩木山の麓に、木村さんのリンゴ畑は広がっています。

僕たちがお伺いさせていただいた時には、今年のリンゴの収穫は終わっていて、リンゴの木の枝から岩木山が綺麗に見えました。

でも、池内さんが来るってことだったんで、1本だけ、リンゴの実を残しておいたんだよ。

ありがたいことに、リンゴを自分たちの手で木から摘めるようにと、1本だけ収穫せずに待っていてくれたんですね。

ひとつの木に沢山できるリンゴの実。木村さんの畑では、大きい木だと、1本で1000以上のリンゴの実ができるそうです。

早速、リンゴの木から実を摘み、その場で齧りつきます。

すごくみずみずしい…。こんなリンゴは食べたことがない」と池内代表。しかも、芯まで美味しく食べきることができ、最後はリンゴの種しか残りません

「お世辞抜きにうまい」と、その出来栄えを賞賛していました。

自然の中に、孤立して生きている命はない

農薬に変わる“何か”が見つからず、諦めかけた木村さんに、無農薬でリンゴを栽培するという不可能を実現するための大きなヒントを与えてくれたのは、岩木山の木々でした。

農薬も肥料も何も与えていないのに、山の木は生命力に溢れている…

雑草、落ち葉、虫、動物の糞など、様々なものが混じり合って、山には柔らかくて温かくて豊かな土がうまれている。その土から根を通じて、栄養が木の全体に送られていて、こんなに生き生きとした状態になっているのだと。

そのことに気づいた木村さんは、雑草を抜くことをやめ、畑の土を山の土に近づけるようにしました。木村さんの畑には様々な雑草が生え、その草陰で虫が鳴く。終いには、野ネズミや野ウサギまでが走り回る状態になっていったそうです。

自然の中に、孤立して生きている命はないのだと木村さんは言います。すべての命が、他の命と関わり合い、支え合って生きていると。

書籍「奇跡のリンゴ」で木村さんは、こんなことを書いています。

「リンゴの木は、リンゴの木だけで生きているわけではない。周りの自然の中で、生かされている生き物なわけだ。人間もそうなんだよ。人間はそのことを忘れてしまって、自分独りで生きていると思っている。そしていつの間にか、自分が栽培している作物も、そういうもんだと思い込むようになったんだな。」

木村さんの畑に咲くタンポポは、なんと腰の高さまであるそうです。これは山で咲くタンポポと同じとのことです。

木村さんの畑にいると、気持ちがよくなりますね。」と池内代表。

夢中になると、とことん打ち込むふたり

実は、池内代表は、木村さんへの贈りものとして、ふたりが大ファンであるビートルズのスポーツタオルを持ってきていました

木村さんは幼い頃から何かに夢中になる性格で、高校時代にハマったのがエレキギターのアンプづくり。そして、ビートルズが来日した際に使われていたアンプの回路図を手に入れ、それを超えるものを作りたいと不眠不休でつくったアンプは出力が大きすぎて、体育館の窓を危うく割るところだったそうです。

何かに夢中になると、とことん打ち込む木村さん。その姿勢は、池内代表とすごく似ていると思いました。

自然の手伝いなんだと、心から思えるか?

木村さんは、美味しい実をつくっているのはリンゴの木で、あくまで自分はリンゴの木のお世話をしているだけだと終始おっしゃっていました。

書籍「奇跡のリンゴ」のエピローグに書かれている一文を紹介します。

自然の手伝いをして、その恵みを分けてもらう。それが農業の本当の姿なんだよ。今の農業は、残念ながらその姿から外れているよ。

ということはさ、いつまでもこのやり方を続けることは出来ないということだよ。昔は私も大規模農法に憧れたけど、その大規模農法地帯はどんどん砂漠化しているわけだからな。アメリカの穀倉地帯も、昔のソ連の集団農場も、今どうなっているか見たらすぐわかる。

どんなに科学が進んでも、人間は自然から離れて生きていくことは出来ないんだよ。だって、人間そのものが、自然の産物なんだからな。

自分は自然の手伝いなんだって、人間が心から思えるかどうか。人間の未来はそこにかかっていると私は思う。

IKEUCHI ORGANICでも『持続可能性』という言葉を大切にしていますが、それは工業製品だけでなく、農業でもそうだし、様々な分野で考えるべきテーマなのだと、改めて木村さんの話を聞いて思いました。

誰も犠牲にしない持続可能なものづくりとは、何なのか?

この問いに対する答えを、これからも探っていきたいと思います。

奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家 木村秋則の記録 (幻冬舎文庫)
執筆・写真:井手 桂司/編集:藤村 能光

WRITER

1984年、熊本生まれ、埼玉育ち。ブランドエディターという肩書きで、企業の持っている物語を多くの人の心に届けるお手伝いをさせていただいています。オーガニックそのままに個性的なIKEUCHIの人々がチャーミングで大好きです。IKEUCHI ORGNIC 公式 noteの編集も担当しています。

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